
旅行の難易度がぐっと上がるのは想定外の事故・事件が起きたとき。余裕がなくなって人間の本性をさらけ出すことになり、一緒に旅をしている友人や恋人のことをトラブルのおかげでよく知れた、という人もたくさんいます。
しかし、ピンチは同時にチャンスでもあります。もし事前に対応方法についての知識が少しでもあれば、どんなときも冷静でいられる人として、あるいは普段から非常時の備えをおこたらない人として周囲の信頼をかち得ることができるかもしれません。ここでは、そのような場面のひとつとして貴重品の紛失をとりあげます。
海外でパスポートの紛失
パスポートを外国でなんらかの事情によってなくした場合、新規発行してもらうか、または一時的に旅券の代わりとなる渡航書を発行してもらうことになります。どちらも、領事がいる在外公館で行いますので、大使館、総領事館あるいは領事事務所と名前の付くところに行かなければいけません(「在外公館」はそれらの総称です)。
その際、基本的に現地警察での被害届または紛失届が必要になりますので、大使館に向かう前にまず現地警察に行ってください。在外公館では、まずパスポートの紛失届を作成します。その際、身元を確認できるもの(運転免許証など)が必要です。紛失届が処理されれば、なくしたパスポートは失効します。
次に、新規パスポートの申請には戸籍謄本または抄本(今ではそれぞれ、「全部事項証明書」、「一部事項証明書」という名前でも呼ばれます)の原本(コピーは不可という意味です)を日本から取り寄せたりしなくてはならず、日数がかかります。旅行を続けるのではなく、すぐに帰国する必要のある人は一時的な代替物として「渡航書」を作ることになります。渡航書の申請の場合は、戸籍謄本または抄本がなくても、運転免許証などで代替できます。
外務省:国内及び国外でパスポートに関する申請手続きに通常必要な書類
外国での被害届の出し方
先進国の国際都市では、警察で日本語の被害届用紙を準備しているところもあります。そこまででなくとも、大都市では外国人向けに英語の被害届がある国も多いです。具体的な方法は、「被害届を英語で書く」を参照してください。
マカオでパスポートをなくした場合
万が一、マカオでパスポートを紛失すると非常に面倒なことになります。というのは、マカオには日本領事館がなく、パスポートの再発行は香港の日本領事館が最寄りであるのにもかかわらず、マカオから香港にはパスポートがなければ行けないシステムだからです。
この場合、まずマカオの治安警察局へ行き紛失証明書を取得し、それからマカオ移民局本部事務所で出境許可をもらって香港に行かなければなりません。パスポートなしで越境するのは通常の手続きではありませんから、事情聴取をマカオ・香港の双方で受けることになり、大変です。
現金がない場合、どうするべきなのか
パスポートや渡航書を申請しようにも、在外公館は主要都市にありますので、地方で事故・事件に遭って現金を失った場合は、まずなんとかしてそこまでたどり着かなければいけません。クレジットカードが無事ならATMキャッシングができるので問題ありませんが(ただし限度額が0だとキャッシングはできません)、現地に頼れそうな人もいない場合、他の選択肢を検討することになります。
具体的な方法は、「海外でお金に困ったらどうしたらいいか」を参照してください。
クレジットカードの紛失
クレジットカードをなくしたら、悪用を防ぐためになるべく早くカード会社の「紛失時緊急連絡先」に連絡をして止めてもらわなければなりません。この窓口であるサポートコールセンターは年中無休ですのでいつでもかけられますが、国際電話になります。日本の国番号81を入れ、電話番号の最初の0をとってかけてください。
日本への国際電話のかけ方・SOS
国際ローミング
日本から持ってきている携帯電話を使って国際電話をかける方法です。音声通話の「ローミング」をオンにしていれば対象地域で使えます。金額は割高になりますので非常時以外はオフにしておいた方がよいでしょう。
スマホ用電話アプリ
日本から持ってきているスマホに”050plus”などのIP電話アプリが入っていれば、Wi-Fiがあるホテルやカフェなどから簡単に日本に電話をかけることができます。あるいは日本を出国する際に、海外Wi-Fiのレンタルをするという方法もあります。
代表的な電話アプリ:050plus、LaLa Call、楽天でんわ、G-Callなど
町のインターネットカフェやインターネット屋から
インターネット屋さんからインターネットに接続し、スカイプやLINE電話といった有料サービスを使ってIP電話を使う方法もあります。また、特に途上国(例えば中南米)にはIP電話を使った国際電話サービスを独立している店もあります。
ホテルの有料電話や、公衆電話から
使い勝手が不便で、かつ通話料金も割高になるためあまりおすすめしませんが、昔ながらのやり方で普通に国際電話をかけることもできます。携帯電話も同時に紛失していて回りにIP電話が使える環境がないときには止むを得ません。
クレジットカード会社への連絡は、身体の安全が確認でき次第すぐに始めるべきです。不正使用があった場合の補償のためクレジットカードに加入する際に入る補償保険は、本人に重大な過失があった場合は補償されませんが、この「過失」にはカードの署名欄を空白にしておくこと、カード表面に暗証番号を書いておく等のほかに、紛失をカード会社への連絡が必要以上に遅れたことも含まれますので気を付けてください。また、必ず現地の警察へも紛失を届け出てください。
海外旅行保険の契約証の紛失
万一のときの手続き順序や連絡先が書いてあるからと持参した契約証などの書類一式ごと紛失してしまった場合、連絡先がすぐにわからずに困るだけでなく保険が適用されるのか心配になりますが、大丈夫です。あらかじめ契約番号を別に控えておけば契約証の紙自体の有無が問題になることはありません。
日本のスマホや携帯電話の紛失
スマホの場合
iPhoneであれば「iPhoneを探す」、アンドロイドの場合は「デバイスマネージャー」を使ってgoogleアカウントにログインし、紛失したスマホの位置を確認したり画面をロックしたり、遠隔データ消去ができます。ただしこれらの機能を使うためには、事前にある程度の設定が必要です。
ガラケー等
契約している会社へ早めに連絡し、一時的に止めてもらいます。会社によって連絡先が違いますので、あらかじめ調べておくと万が一の際にも対応がスムーズにできます。
キャリア | 盗難・紛失・案内 |
---|---|
ドコモ | 0120-524-360 |
au | 0077-7-113 0120-977-033 |
ソフトバンク | +81-92-687-0025 |
次に悪用を防ぐため、使っていたSNSやEメールなどのパスワードも変更しましょう。
日本の銀行のキャッシュカードの紛失
早めに銀行に連絡し、一時的に止めてもらいます。
銀行の紛失受付窓口
三菱東京UFJ銀行(喪失受付センター) | 0120-544-565 または 03-5637-0875 |
---|---|
三井住友銀行(三井住友銀行ATMセンター) | 0120-956-999(国内) (携帯電話・PHS可) 03-6850-1000(海外) |
ゆうちょ銀行(カード紛失センター) | 0120-794-889(国内) 045-287-1700(海外) |
みずほ銀行(キャッシュカード紛失) | 0120-415-415(国内) 03-5500-3737(海外) |
りそな銀行(クイックロビー運営センター ) | 0120-30-1343(国内) 048-826-0311(海外) |
ノートパソコンやタブレットのデバイス紛失
早めに、ノートパソコンやタブレットに記憶させておいたEメールやウェブサイトのパスワード等をすべて変更しましょう。

海外で被害届を出すには
海外でお金がなくなったときの対処法